SQL正規表現の使い方|REGEXPとLIKEの違い・DB別実例
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SQLでデータを検索していると、「特定の文字で始まるデータだけ抽出したい」「数字が3桁または4桁の値だけを確認したい」「メールアドレスや電話番号の形式が崩れていないか調べたい」といった場面があります。
このような文字列条件は、LIKE だけでも一部は対応できます。しかし、表記ゆれが多いデータや、複数条件をまとめて判定したいケースでは、LIKE '%文字列%' のような単純な部分一致だけでは限界があります。
そこで役立つのが、SQLの正規表現、つまり REGEXP です。正規表現を使うと、「aで始まる」「末尾が03または52」「数字が3〜4桁」「特定の形式に一致する文字列」といった条件を、1つのパターンとして表現できます。
この記事では、SQLの正規表現について、基本概念、LIKE との違い、よく使う記号、MySQL・PostgreSQL・Oracle・BigQueryでの書き方、抽出・置換で使う関数、実務での注意点まで整理します。元記事の「LIKEとREGEXPの違い」「DB別の書き方」「抽出・置換」「照合の注意点」を軸に、実務で使いやすい形へ再構成しています。
SQLで使う正規表現の基本
正規表現は「文字列のパターン」を表す記法
正規表現とは、特定の文字列そのものではなく、「文字列のパターン」を表現するための記法です。
たとえば、次のような条件を考えてみます。
Aで始まる文字列- 数字だけで構成されている文字列
- 末尾が
03または52の文字列 - ハイフンあり・なしの電話番号
- メールアドレスらしい形式の文字列
- ログ内に含まれる特定のステータスコード
これらを LIKE だけで書こうとすると、OR 条件が増えたり、条件が読みにくくなったりします。正規表現を使うと、文字列の特徴を1つのパターンとしてまとめて表現できます。
たとえば「数字が3桁または4桁」という条件は、正規表現では次のように表せます。
^[0-9]{3,4}$
このパターンは、「先頭から末尾まで、0〜9の数字が3回以上4回以下続く」という意味です。
LIKEとREGEXPの違い
LIKE は、SQLでよく使われる文字列検索の方法です。
SELECT *
FROM users
WHERE name LIKE '%田中%';
このSQLは、name に「田中」を含む行を検索します。LIKE では、主に次のワイルドカードを使います。
%:0文字以上の任意の文字列_:任意の1文字
一方、REGEXP や REGEXP_LIKE では、より細かい条件を指定できます。
SELECT *
FROM users
WHERE user_code REGEXP '^A[0-9]{4}$';
これは、「A で始まり、その後に数字4桁が続く値」を抽出する例です。
LIKE は単純な部分一致に向いています。一方、正規表現は、文字列の形式チェック、表記ゆれの吸収、複数パターンの同時判定、データクレンジングなどに向いています。
LIKEで十分なケースとREGEXPを使うべきケース
すべての文字列検索を正規表現で書く必要はありません。むしろ、単純な検索なら LIKE の方が読みやすく、保守もしやすいです。
LIKE で十分なケースは、次のような場合です。
- 特定の単語を含むか調べたい
- 前方一致・後方一致だけで条件が足りる
- 条件が1〜2個程度でシンプル
- SQLを読む人にとって分かりやすさを優先したい
一方で、REGEXP を使うべきケースは次のような場合です。
- 複数の表記ゆれをまとめて検索したい
- 数字の桁数や文字種を指定したい
- メールアドレス、電話番号、社員IDなどの形式を確認したい
- ログやURLから特定パターンを抽出したい
LIKEとORの組み合わせが増えすぎている
実務では、「まずは LIKE で書けるか」を考え、条件が複雑になった時点で正規表現を検討するとよいでしょう。
SQLで正規表現が役立つ実務シーン
表記ゆれのあるデータをまとめて検索する
業務データには、表記ゆれがよく発生します。
たとえば、商品名や会社名、住所、メモ欄、問い合わせ内容などでは、同じ意味でも表記が統一されていないことがあります。
例として、「東京」「東京都」「Tokyo」のような表記が混在している場合、LIKE だけで書くと次のようになります。
WHERE address LIKE '%東京%'
OR address LIKE '%東京都%'
OR address LIKE '%Tokyo%'
正規表現を使えば、次のようにまとめられます。
WHERE address REGEXP '東京|東京都|Tokyo'
もちろん、実際には「東京都」と「東京」の包含関係や大文字小文字の違いも考慮する必要がありますが、複数の候補を1つの条件にまとめられる点は大きなメリットです。
IDやコードの形式をチェックする
社員ID、会員番号、商品コード、注文番号など、一定のルールを持つ文字列のチェックにも正規表現は有効です。
たとえば、次のようなルールがあるとします。
- 先頭は
EMP - その後に数字5桁
- 例:
EMP00001
この場合、正規表現では次のように書けます。
^EMP[0-9]{5}$
SQLでは、次のように形式に合うデータを抽出できます。
SELECT *
FROM employees
WHERE employee_code REGEXP '^EMP[0-9]{5}$';
逆に、形式に合わないデータを探す場合は、否定条件を使います。
SELECT *
FROM employees
WHERE employee_code NOT REGEXP '^EMP[0-9]{5}$';
このように、正規表現は「正しいデータを探す」だけでなく、「異常なデータを見つける」用途でも役立ちます。
データクレンジングや前処理に使う
分析や集計の前には、データの表記を整える作業が必要になることがあります。
たとえば、電話番号が次のように混在しているケースです。
090-1234-567809012345678090 1234 5678
このようなデータを集計や突合に使う場合、形式を統一しなければ正しく比較できません。正規表現を使うと、ハイフンや空白を削除したり、特定の形式に整形したりできます。
REGEXP_REPLACE(phone_number, '[- ]', '')
正規表現は、検索だけでなく、データ整形や名寄せの前処理にも向いています。
ログ調査で特定のパターンを抽出する
システム開発や運用では、ログから必要な情報を探す場面があります。
たとえば、次のようなログがあるとします。
2026-05-19 10:15:30 status=500 path=/api/users/123
ここから、ステータスコードやパスだけを抽出したい場合、正規表現が役立ちます。
status=([0-9]{3})
ログ調査では、完全一致よりも「一定の形式に合う文字列を探す」ことが多いため、正規表現との相性がよいです。
よく使う正規表現の記号
先頭と末尾を表す「^」「$」
^ は文字列の先頭、$ は文字列の末尾を表します。
^A
これは「Aで始まる文字列」を意味します。
03$
これは「03で終わる文字列」を意味します。
完全一致にしたい場合は、先頭と末尾の両方を指定します。
^ABC$
これは、ABC という文字列だけに一致します。XABC や ABC123 には一致しません。
SQLで正規表現を使う場合、先頭・末尾を指定しないと、意図しない部分一致が起きることがあります。形式チェックでは、基本的に ^ と $ を使って範囲を明確にするのが安全です。
いずれかに一致させる「|」
| は「または」を表します。
cat|dog
これは、cat または dog に一致します。
複数文字のまとまりを条件にする場合は、括弧を使います。
(03|52)$
これは、「末尾が03または52」の文字列に一致します。
SELECT *
FROM users
WHERE user_code REGEXP '(03|52)$';
このように、複数の候補をまとめて検索したいときに便利です。
繰り返しを表す「*」「+」「?」「{n,m}」
正規表現では、直前の文字やグループが何回出現するかを指定できます。
*:0回以上+:1回以上?:0回または1回{n}:ちょうどn回{n,}:n回以上{n,m}:n回以上m回以下
たとえば、数字が3桁の文字列は次のように表せます。
^[0-9]{3}$
数字が3〜4桁なら次のようになります。
^[0-9]{3,4}$
電話番号や郵便番号、社員番号などの桁数チェックでは、この書き方をよく使います。
文字の種類を指定する「[]」
[] は、指定した文字のいずれか1文字に一致します。
[abc]
これは、a、b、c のいずれか1文字に一致します。
数字を表す場合は、次のように書きます。
[0-9]
英大文字なら次のようになります。
[A-Z]
英数字を対象にしたい場合は、次のように組み合わせられます。
[A-Za-z0-9]
また、[] の先頭に ^ を置くと、「指定した文字以外」を表します。
[^0-9]
これは、数字以外の1文字に一致します。
任意の1文字を表す「.」
. は任意の1文字を表します。
a.c
これは、abc、a1c、a-c などに一致します。
ただし、. は便利な反面、条件が広くなりすぎることがあります。特に、ログやCSVのように区切り文字があるデータでは、単純に .* と書くより、区切り文字以外を指定する方が安全です。
たとえば、カンマまでの文字列を取りたい場合は、次のように書けます。
[^,]*
これは、「カンマ以外の文字が0回以上続く」という意味です。
グループ化に使う「()」
() は、複数の文字を1つのまとまりとして扱うために使います。
(ab)+
これは、ab というまとまりが1回以上続く文字列に一致します。
また、| と組み合わせることで、条件の範囲を明確にできます。
^(admin|user|guest)$
これは、admin、user、guest のいずれかに完全一致する文字列を表します。
メタ文字を普通の文字として扱うエスケープ
正規表現では、. や +、*、? などは特別な意味を持ちます。これらを普通の文字として検索したい場合は、エスケープが必要です。
たとえば、ドットを含むファイル名を検索したい場合、次のように書きます。
\.csv$
これは、末尾が .csv の文字列に一致します。
SQLでは、DBや文字列リテラルの仕様によって、バックスラッシュの扱いが変わることがあります。実際に使うDBで、最小のサンプルを作って確認することが大切です。
DB別:SQLで正規表現を使う書き方
MySQL:REGEXP/REGEXP_LIKEを使う
MySQLでは、古くから REGEXP または RLIKE を使って正規表現検索ができます。
SELECT *
FROM users
WHERE user_code REGEXP '^A[0-9]{4}$';
MySQL 8以降では、REGEXP_LIKE()、REGEXP_REPLACE()、REGEXP_SUBSTR() などの関数も利用できます。MySQL公式マニュアルでは、REGEXP_REPLACE() は正規表現に一致した箇所を置換し、REGEXP_SUBSTR() は一致した部分文字列を返す関数として説明されています。
SELECT *
FROM users
WHERE REGEXP_LIKE(user_code, '^A[0-9]{4}$');
大文字小文字を明示したい場合は、match_type を使うことがあります。
SELECT *
FROM users
WHERE REGEXP_LIKE(user_code, '^abc$', 'c');
MySQLでは、照合順序、つまり collation の影響を受ける場合があります。開発環境と本番環境で照合順序が違うと、同じSQLでも結果が変わる可能性があるため注意が必要です。
PostgreSQL:~/~*を使う
PostgreSQLでは、正規表現の一致判定に ~ や ~* を使います。
SELECT *
FROM users
WHERE user_code ~ '^A[0-9]{4}$';
~ は大文字小文字を区別する正規表現一致です。大文字小文字を区別しない場合は ~* を使います。
SELECT *
FROM users
WHERE user_code ~* '^abc$';
PostgreSQL公式ドキュメントでは、~ は大文字小文字を区別する一致、~* は大文字小文字を区別しない一致として示されています。また、POSIX正規表現は LIKE や SIMILAR TO より強力なパターンマッチ手段として説明されています。
なお、PostgreSQLには SIMILAR TO もありますが、一般的な正規表現と完全に同じではありません。通常の正規表現検索では、~ や ~* を使う方が実務では分かりやすいでしょう。
Oracle:REGEXP_LIKE/REGEXP_SUBSTRを使う
Oracleでは、REGEXP_LIKE を使って正規表現による条件判定を行います。
SELECT *
FROM users
WHERE REGEXP_LIKE(user_code, '^A[0-9]{4}$');
Oracle公式ドキュメントでは、REGEXP_LIKE は LIKE に似ているものの、単純なパターンマッチではなく正規表現によるマッチングを行う条件として説明されています。さらに、match_param によって大文字小文字の扱いや複数行モードなどを指定できます。
部分文字列を取り出したい場合は、REGEXP_SUBSTR を使います。
SELECT REGEXP_SUBSTR(log_text, 'status=[0-9]{3}')
FROM access_logs;
Oracleでは、正規表現関数の引数が多くなりやすいため、「どの位置から検索するか」「何回目の一致を返すか」「大文字小文字をどう扱うか」を確認しながら使うことが重要です。
BigQuery:REGEXP_CONTAINS/REGEXP_EXTRACT/REGEXP_REPLACEを使う
BigQueryでは、正規表現による判定に REGEXP_CONTAINS、抽出に REGEXP_EXTRACT、置換に REGEXP_REPLACE を使います。BigQuery公式ドキュメントでも、REGEXP_CONTAINS は部分一致の確認、REGEXP_EXTRACT は一致部分の抽出、REGEXP_REPLACE は一致部分の置換に使う関数として整理されています。
SELECT *
FROM users
WHERE REGEXP_CONTAINS(user_code, r'^A[0-9]{4}$');
抽出の例は次の通りです。
SELECT
REGEXP_EXTRACT(log_text, r'status=([0-9]{3})') AS status_code
FROM access_logs;
BigQueryでは、正規表現文字列の前に r を付けることで、バックスラッシュの扱いを分かりやすくできます。
実務で使えるSQL正規表現の例
数字だけのデータを抽出する
数字だけで構成されているデータを探す場合は、次のように書きます。
^[0-9]+$
MySQLの例です。
SELECT *
FROM users
WHERE user_id REGEXP '^[0-9]+$';
これは、先頭から末尾まで数字が1文字以上続くデータに一致します。
逆に、数字以外が混ざっているデータを探したい場合は、否定条件を使います。
SELECT *
FROM users
WHERE user_id NOT REGEXP '^[0-9]+$';
データ移行やCSV取り込み後のチェックでよく使うパターンです。
郵便番号の形式をチェックする
日本の郵便番号は、一般的に 123-4567 の形式です。
^[0-9]{3}-[0-9]{4}$
SQLでは次のように使えます。
SELECT *
FROM customers
WHERE postal_code REGEXP '^[0-9]{3}-[0-9]{4}$';
ハイフンなしの 1234567 も許可したい場合は、次のようにします。
^[0-9]{3}-?[0-9]{4}$
-? は、ハイフンが0回または1回出現するという意味です。
メールアドレスらしい形式をチェックする
メールアドレスの厳密な検証は非常に複雑です。SQLの正規表現だけで完全に判定しようとすると、かえって保守しにくくなります。
実務では、DB上では簡易チェックに留めるのが現実的です。
^[A-Za-z0-9._%+-]+@[A-Za-z0-9.-]+\.[A-Za-z]{2,}$
SQL例です。
SELECT *
FROM users
WHERE email REGEXP '^[A-Za-z0-9._%+-]+@[A-Za-z0-9.-]+\\.[A-Za-z]{2,}$';
このパターンは、多くの一般的なメールアドレスに対応できますが、すべての正しいメールアドレスを保証するものではありません。ユーザー登録時の厳密なバリデーションは、アプリケーション側のライブラリやメール認証と組み合わせるのが安全です。
電話番号の表記ゆれを確認する
電話番号は、ハイフンあり・なし・空白ありなど表記が揺れやすい項目です。
簡易的に、数字とハイフンだけで構成されているか確認するなら次のように書けます。
^[0-9-]+$
携帯電話番号のように、090、080、070 で始まる11桁の番号を確認したい場合は、次のような考え方ができます。
^(070|080|090)-?[0-9]{4}-?[0-9]{4}$
このパターンは、次のような値に一致します。
09012345678090-1234-567808012345678070-1234-5678
ただし、実際の電話番号ルールは業務要件によって異なります。入力許可する形式、保存時に正規化する形式、画面表示する形式を分けて設計すると、後から扱いやすくなります。
URLやパスから特定の値を抽出する
URLやログのパスからIDを取り出す場合にも正規表現は便利です。
たとえば、次のようなパスがあるとします。
/users/12345/detail
ユーザーIDだけを取り出したい場合、次のようなパターンを使えます。
/users/([0-9]+)/detail
BigQueryなら次のように書けます。
SELECT
REGEXP_EXTRACT(path, r'/users/([0-9]+)/detail') AS user_id
FROM access_logs;
() で囲んだ部分が抽出対象になります。ログ分析では、このようにパスやクエリ文字列から必要な値だけを抜き出す処理がよく使われます。
REGEXP_EXTRACT・REGEXP_SUBSTR・REGEXP_REPLACEの使い方
REGEXP_EXTRACT/REGEXP_SUBSTRは「取り出す」ための関数
正規表現は、条件判定だけでなく、文字列の一部を取り出す用途にも使えます。
たとえば、ログからステータスコードを取り出す場合です。
method=GET status=404 path=/products/10
この中から 404 だけを取り出したい場合、BigQueryでは次のように書けます。
SELECT
REGEXP_EXTRACT(log_text, r'status=([0-9]{3})') AS status_code
FROM access_logs;
OracleやMySQLでは、REGEXP_SUBSTR を使う場面があります。
SELECT REGEXP_SUBSTR(log_text, 'status=[0-9]{3}')
FROM access_logs;
抽出処理では、「どこまでを一致させるか」と「どこを取り出すか」を分けて考えることが重要です。広すぎる .* を使うと、想定外の範囲まで一致することがあります。
REGEXP_REPLACEは「置換・整形」するための関数
REGEXP_REPLACE は、正規表現に一致した部分を別の文字列に置き換える関数です。
たとえば、電話番号からハイフンを削除する場合です。
SELECT REGEXP_REPLACE(phone_number, '-', '') AS normalized_phone
FROM users;
ハイフンだけでなく空白も削除したい場合は、次のように書けます。
SELECT REGEXP_REPLACE(phone_number, '[- ]', '') AS normalized_phone
FROM users;
また、複数の空白を1つにまとめる処理にも使えます。
SELECT REGEXP_REPLACE(name, ' +', ' ') AS normalized_name
FROM users;
大量のデータを更新する前には、いきなり UPDATE するのではなく、まず SELECT で変換結果を確認してください。
SELECT
phone_number,
REGEXP_REPLACE(phone_number, '[- ]', '') AS normalized_phone
FROM users;
変換結果を確認してから、問題がなければ UPDATE に進むのが安全です。
SQL正規表現でよくある失敗と注意点
先頭・末尾を指定せずに誤マッチする
正規表現でよくある失敗が、^ と $ を付け忘れることです。
たとえば、次のパターンを考えます。
[0-9]{3}
これは、3桁の数字を含む文字列に一致します。つまり、abc123xyz にも一致します。
「3桁の数字だけ」を許可したいなら、次のように書く必要があります。
^[0-9]{3}$
形式チェックでは、部分一致なのか完全一致なのかを必ず意識しましょう。
.*を使いすぎて条件が広くなる
.* は「任意の文字が0回以上続く」という意味です。便利ですが、使いすぎると条件が広くなり、想定外の文字列まで一致することがあります。
たとえば、カンマ区切りのデータで1項目目だけを取りたい場合、次のように書くと広すぎる場合があります。
^.*,
この場合は、カンマ以外の文字を指定する方が安全です。
^[^,]*,
データの構造が分かっている場合は、「何でもよい」ではなく、「区切り文字以外」「数字だけ」「英字だけ」のように条件を狭めましょう。
DBごとの正規表現の違いを無視する
正規表現は、どのDBでも完全に同じように動くわけではありません。
特に差が出やすいのは、次の点です。
- 関数名
- 演算子
- 大文字小文字の扱い
- エスケープの書き方
- 後方参照の書き方
- Unicodeや日本語の扱い
- 改行を
.に含めるかどうか - 抽出時にどのグループを返すか
MySQLで動いた正規表現を、PostgreSQLやOracleにそのまま移すと、結果が変わることがあります。複数DBを扱う現場では、「正規表現パターン」だけでなく、「DBごとの呼び出し方」もセットで確認する必要があります。
大文字小文字と照合順序を確認していない
正規表現の一致結果は、DBの設定や照合順序の影響を受けることがあります。
たとえば、abc と ABC を同じとみなすのか、別の値として扱うのかは、システム要件によって異なります。
PostgreSQLでは ~ と ~* を使い分けられます。Oracleでは match_param によって大文字小文字の扱いを指定できます。MySQLでは、照合順序や match_type が関係する場合があります。
重要なのは、「なんとなく一致した」ではなく、「大文字小文字を区別する設計なのか」を明確にすることです。
パフォーマンスを考慮していない
正規表現は便利ですが、複雑なパターンを大量データに対して実行すると、処理が重くなる場合があります。
特に注意したいのは、次のようなケースです。
- 大量レコードに対して毎回正規表現検索をしている
- 先頭が固定されていない曖昧な条件を使っている
.*を多用している- WHERE句で関数を使い、インデックスが効きにくくなっている
- 集計処理やバッチ処理で何度も同じ正規表現を実行している
検索頻度が高い条件は、保存時に正規化した値を別カラムに持つ、フラグ化する、前処理で整形しておくなどの設計も検討しましょう。
SQL正規表現を安全に使うための実務チェックリスト
条件を日本語で言語化してから書く
正規表現を書く前に、まず条件を日本語で明確にしましょう。
悪い例は、いきなり次のように書き始めることです。
.*[0-9]+.*
良い進め方は、次のように条件を分解することです。
- 対象は文字列全体か、一部か
- 先頭に決まりはあるか
- 末尾に決まりはあるか
- 使用できる文字種は何か
- 桁数や文字数の制限はあるか
- 許可したい例と除外したい例は何か
正規表現は、書き方よりも要件定義が重要です。
当たる例・当たらない例を用意する
正規表現を作るときは、必ずテストデータを用意しましょう。
たとえば、社員コード EMP00001 の形式チェックなら、次のように考えます。
一致してほしい例:
EMP00001EMP12345
一致してほしくない例:
EMP1234EMP123456emp12345XEMP12345EMP12A45
このように、正常系だけでなく異常系も用意すると、誤マッチを防ぎやすくなります。
SELECTで確認してからUPDATEする
REGEXP_REPLACE を使ってデータを更新する場合は、必ず先に SELECT で結果を確認します。
SELECT
original_value,
REGEXP_REPLACE(original_value, 'pattern', 'replacement') AS converted_value
FROM target_table;
確認後に問題がなければ、UPDATE を実行します。
UPDATE target_table
SET target_column = REGEXP_REPLACE(target_column, 'pattern', 'replacement');
本番データを扱う場合は、バックアップやトランザクションも含めて慎重に進める必要があります。
複雑になりすぎたら分割する
正規表現は、1行で多くの条件を書ける反面、複雑になりすぎると読みづらくなります。
次のような状態になったら、分割を検討しましょう。
- パターンを見ても意図が分からない
- 修正すると別の条件が壊れそう
- 仕様変更のたびに正規表現が肥大化している
- チーム内で理解できる人が限られている
SQL側で無理にすべて判定せず、アプリケーション側のバリデーション、データ登録時の正規化、チェック用ビュー、補助カラムなどを組み合わせると、保守しやすくなります。
公式情報・参考情報で確認すべきポイント
MySQLを使う場合
MySQLでは、REGEXP_LIKE、REGEXP_REPLACE、REGEXP_SUBSTR などの関数仕様、match_type、照合順序の影響を確認しておくと安全です。特に、MySQL 5.7以前とMySQL 8以降では正規表現まわりの挙動に差が出る場合があるため、利用バージョンに合わせて公式マニュアルを確認しましょう。
PostgreSQLを使う場合
PostgreSQLでは、~、~*、!~、!~* の違いを押さえることが重要です。また、SIMILAR TO とPOSIX正規表現は同じものではないため、どちらを使うべきかを用途に応じて判断しましょう。
Oracleを使う場合
Oracleでは、REGEXP_LIKE、REGEXP_SUBSTR、REGEXP_REPLACE などの関数に加え、match_param の指定が重要です。大文字小文字、改行、複数行、空白の扱いなどを明示できるため、検索条件の意図をSQL上で表現しやすくなります。
BigQueryを使う場合
BigQueryでは、ログ分析やデータ分析の前処理で REGEXP_CONTAINS、REGEXP_EXTRACT、REGEXP_EXTRACT_ALL、REGEXP_REPLACE を使う場面が多くあります。抽出・置換の用途が明確に分かれているため、分析用SQLを書く人は公式の文字列関数一覧を確認しておくとよいでしょう。
まとめ:SQLの正規表現は「複雑な文字列条件」を安全に扱うための武器
SQLの正規表現は、LIKE では表現しにくい複雑な文字列条件を扱うための強力な機能です。
特に、次のような場面で効果を発揮します。
- 表記ゆれをまとめて検索したい
- IDやコードの形式をチェックしたい
- メールアドレスや電話番号の簡易チェックをしたい
- ログやURLから必要な値を抽出したい
- データクレンジングや置換処理を行いたい
- 異常値や不正な形式のデータを見つけたい
ただし、正規表現は便利な反面、書き方を誤ると意図しないデータまで一致したり、DBごとの差で結果が変わったり、パフォーマンスに影響したりします。
実務で使うときは、次の流れを意識しましょう。
- 条件を日本語で明確にする
LIKEで足りるか、正規表現が必要か判断する- 先頭・末尾・文字種・桁数を明確にする
- 当たる例・当たらない例でテストする
- DBごとの関数・演算子・照合順序を確認する
- 更新処理では必ずSELECTで変換結果を確認する
SQLの正規表現を理解できると、単なるデータ検索だけでなく、データ品質の確認、ログ分析、データ移行、業務システムの保守まで対応できる範囲が広がります。
文字列処理やデータベース設計に興味がある方にとって、正規表現は実務で差がつくスキルの1つです。こうしたSQLの知識を現場で活かしながら、データを扱う力やシステム改善の力を伸ばしていきたい方は、技術に向き合えるチームで経験を積むことも大きな選択肢になります。私たちも、データベースやWebシステムの改善に関心を持ち、実務を通じて成長していきたい仲間を探しています。
学んだSQLを、実務で使えるスキルにしたい方へ
本記事ではSQLの基本的な考え方や使い方を解説しましたが、
「実務で使えるレベルまで身につけたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
SQLは、文法を理解するだけでなく、
- どんなデータ構造で使われるのか
- どんなクエリが現場で求められるのか
を意識して学ぶことで、実践力が大きく変わります。
そうした「実務を見据えたSQL学習」を進めたい方には、
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