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PostgreSQLでNULLを置き換える方法:COALESCEの基礎から実践まで

本記事では、PostgreSQLで生じるNULL値の取り扱い方法について解説します。NULLが含まれるデータを正しく処理するためには、COALESCEなどの関数を用いて値を置き換える手法が重要になります。本稿ではNULL値の基礎から具体的な使用例、発生しがちなエラーの対策まで幅広く紹介していきます。

NULLはデータベースの運用において未定義の状態を示すものであり、通常の演算子では扱いづらいのが特徴です。データ集計や表示処理の正確性を高めるためにも、NULLを適切に置き換えて扱う方法は知っておく必要があります。

ここでは代表的な関数であるCOALESCEの使い方を中心に見ていきますが、それ以外にもCASE文やNULLIF、UPDATEやトリガーなどを駆使する方法もあわせて取り上げます。ぜひ自身のプロジェクトでのデータ整合性維持に役立ててください。

・この記事で分かること

項目 内容
NULLの基本 NULLと0・空文字の違い
基本対策 COALESCEの使い方と注意点
応用 NULLIF・CASEとの使い分け
実務例 集計・文字列・JSON・UPDATE
自動化 トリガーによるNULL補完
エラー対策 よくある失敗と回避方法

NULL置換が必要になる理由と基本的な考え方

NULL値は未定義や欠損を意味するため、SQLの計算や表示で扱う際に特有の注意点があります。

まずNULL値自体は「値がない」ことを表し、空文字や0とは異なるものです。このため、NULLが含まれたまま計算を行うと想定外の結果が出たり、エラーにつながる可能性があります。例えば売上集計や文字列操作でNULLが混在すると、思わぬところで正しい合計や文字列が得られないことがあるのです。

もう一つ気を付けたい点は、NULLを通常の比較演算子で扱おうとしても結果が期待通りにならない場合があることです。条件式でNULLを比較したいときはIS NULLやIS NOT NULLなど専用の構文を利用しなければなりません。こうした挙動を十分に理解しておくと、データ不整合を防ぎ、運用負荷を軽減しやすくなります。

これらの理由から、多くのケースでNULL値をある特定の値へ置き換える処理が必要です。COALESCEやCASE文などを使えば、集計や画面表示を行う際にスムーズに別の値を返せるようになります。NULLの概念と挙動を把握し、最適な置換戦略を組み立てましょう。

COALESCE関数の基本構文

PostgreSQLにおける代表的なNULL値対策関数がCOALESCEです。その構文と使い方、類似の関数との比較を通して基礎を押さえましょう。

COALESCE関数は複数の引数を左から順に評価し、最初に見つかったNULLでない値を返す仕組みを持ちます。たとえばCOALESCE(NULL, 'ABC')は'ABC'を返し、COALESCE('XYZ', 'ABC')であれば'XYZ'をそのまま返します。これにより、対象列がNULLだった時だけ別の値を補完でき、分かりやすく柔軟な記述が可能です。

複数列を引数に含めれば、優先度に基づいてNULLでない値を順次チェックできます。例えばCOALESCE(col1, col2, 'DEFAULT')と書けば、col1がNULLでなければcol1を、col1がNULLなら次にcol2をチェックし、それもNULLなら'DEFAULT'という流れを一行で表現できます。特に集計や文字列操作で広く利用される便利な関数です。

数値の集計では、NULLを0に置き換えて合計や平均を取得できるため活用の幅も非常に広いです。COALESCEは基本的にデータの欠損を埋める用途で強力という点を踏まえ、まずはシンプルな例から実際の複雑なケースまで対応できるよう使い方を身につけましょう。

NULLIFとの違いと使い分け

NULLIFは、指定した2つの値が等しい場合にNULLを返し、それ以外の場合には第一引数の値をそのまま返す関数です。一方、COALESCEは第一引数から順に評価して、最初に出てくるNULLでない値を返すという動作です。つまり、COALESCEは空欄を埋めていくイメージが強く、NULLIFは特定の状況でNULL値を生成するために用いられる性質があります。

例えばNULLIF(salary, 0)と書くと、salaryが0のときにNULLを返し、それ以外はsalaryを返します。これに対してCOALESCE(salary, 0)はsalaryがNULLなら0を返し、それ以外はsalaryを返します。使い分けとしては「元々の値をNULLとして扱いたい」時はNULLIF、「NULL値を既知の値で埋めたい」時はCOALESCE、と覚えると分かりやすいでしょう。

実際の業務では、NULLIFとCOALESCEを組み合わせて使う場面もあります。たとえばある列が特定の値ならNULLに変換し、さらにそのNULLを別の値で置き換えるといった複雑な処理が必要な場合などに、有効に活用できます。

NULL処理関数の使い分け早見表

手法 主な用途 特徴 向いているケース
COALESCE NULLを埋める 最初の非NULLを返す 集計・表示
NULLIF 特定値をNULL化 条件一致でNULL 0除算対策
CASE 条件分岐 複雑な制御が可能 業務ロジック
  •  単純なNULL補完 → COALESCE
  • 特定値を無効扱い → NULLIF
  • 条件が多い → CASE

CASE文を活用した高度なNULL置換

COALESCEでは難しい複雑な条件分岐を実現するにはCASE文が便利です。CASEを使うと条件に応じて柔軟に値を置き換えられます。

CASE文の基本構文はCASE WHEN 条件 THEN 値 ELSE 他の値 ENDという形で、SQLクエリの中に埋め込めます。NULLに関する複雑なロジックを組む際は、IF文感覚で書けるため可読性が高くなるケースがあります。たとえば集計期間やユーザーの属性ごとに別の置き換え値が欲しい場合などに非常に役立ちます。

COALESCEは単純なパターンで非常に有用ですが、たとえば「NULLの場合だけでなく、ある条件を満たしたときに別の値を当てはめたい」という状況ではCASEが優位です。CASE文を使うと、条件式を絡めた上でNULLかどうかや特定の値かどうかを判定しながら別々の結果を返せます。書式としてはやや長くなりますが、複雑なカスタマイズが可能です。

PostgreSQLではCASE文とCOALESCEを合わせ技として使うことも珍しくありません。まずCASE文で特定の条件を満たせばNULLとみなす、あるいは特定の値に置き換える、そのあとにCOALESCEで残りの欠損を埋めるといった応用が考えられます。柔軟な発想でNULL値をコントロールしていきましょう。

実践的なNULL置換の使用例

ここでは実務でよく登場する複数のシチュエーションを通して、NULL値の置換の具体的な方法を示します。

現場でよく用いられるのは、複数列から優先度をつけて値を取得したり、数値演算時にNULLが混ざっても正確な統計を出したい場合です。他にも、文字列操作でNULLが混在しないか気をつけるシーンも多いでしょう。こうした状況において、COALESCEやCASE文を分かりやすく組み合わせることで、出力を整理して後工程の処理をスムーズにすることが可能です。

複雑なデータ構造を扱う際には、JSON/JSONBや配列内に入っているNULLも問題になる場合があります。これらに対しても同様にCOALESCEを適用したり、CASE文を活用してデフォルト値を設定することで、エラーを未然に防ぐことができます。以下のサブセクションで、いくつかの具体的な方法を見ていきましょう。

たとえば分析レポートを作成するとき、NULLを適切に扱わないと誤った合計値や表示が反映されるケースが多々あります。実務上のトラブルを回避するためにも、各シチュエーションでの最適解を把握しておきましょう。

複数のカラムを使った値補完

データを整備するうえで、複数のカラムのうちどれか一つがNULLでなければ補完を行うパターンはよくあります。例えば住所情報を別々のカラムで持っている場合に、都道府県がNULLなら市区町村カラムを参照し、それもNULLなら最後のカラムを使うといった処理です。COALESCE(col1, col2, col3)のように書くことで、優先度に応じた値を一行で取得できます。

この手法はデータの正規化が十分でないテーブルを扱う場面でも力を発揮します。複数の古いカラムに散らばった情報を、新しい列にまとめたいときにも活用できるのです。まずはCOALESCE関数を使って仮の列を作り、そこから一貫した基準を作っていくことで、徐々にデータの質を向上させられます。

また、既存のデータベースを移行する際にも便利なアプローチです。移行先でNULLを許容しない仕様になっている場合、COALESCEを用いてNULLを初期値に置き換える手順を踏むことでスムーズな移行が可能となります。

数値集計時に0へ置き換える方法

売上集計や個数のカウントなど、数値計算の過程でNULLが含まれると平均値や合計値が正しく計算されない恐れがあります。そこでCOALESCEを用いて、NULLなら0を返すように設定すると計算結果を安定させられます。
例えば

SELECT SUM(COALESCE(sales, 0)) FROM table_name;

という形で書くと、NULLを0として扱えて便利です。

さらに平均値を取得する際もCOALESCEを用いることで、NULLが混在していた場合にもスムーズに処理できます。ただし、NULLが持つ本来の意味が「値がない」「未定義」であることを考慮し、無条件に0にすることで分析結果を歪めてしまわないよう注意が必要です。集計レポートによっては、NULLを0に置き換えるかどうか、事前に協議して方針を定めることが重要です。

もしも数値列のNULLが多い場合は、データクリーニングやNOT NULL制約の見直しなどを行うことも考えられます。COALESCEを使うだけでなく、NULLが発生する原因そのものを洗い出して改善できると理想的です。

文字列操作時のNULL対策

文字列結合や部分文字列取得の際にNULLが含まれると、結果がNULLになってしまうことが少なくありません。特にユーザーの苗字と名前を連結するような場面では、どちらかがNULLだっただけで全体がNULLになり、不都合を生じることがあります。COALESCEを使えば、NULLのときに代わりの文字や空文字を返すよう指定できます。

例として

SELECT COALESCE(last_name, '') || COALESCE(first_name, '') FROM users;

のように書けば、last_nameかfirst_nameがNULLでも空文字で補完し、連結結果を取得できます。CASE文で細かく制御することで、NULLかどうかだけでなく文字列の長さによる条件分岐など、高度な処理も可能です。

また、テキスト検索やパターンマッチングにおいてNULLが混ざると期待通りの結果が返ってこないことがあります。NULLを検索対象から除外するか、適切な文字列に置き換えることで検索の精度を高め、ユーザーに誤解を与えない結果を素早く提示できるようになるでしょう。

JSON/JSONBや配列型におけるNULL処理

PostgreSQLではJSONや配列型を扱うケースも多く、ここでNULLが混在すると複雑なエラーや不正確な取得結果を招くことがあります。COALESCEを適用して値を整形したり、CASE文を使って要素ごとにNULLを別の値に変換する手法は重要です。

特にJSONBのフィールドがNULLになっている場合は、特定のキーを示す際にエラーが発生する、またはクエリ結果が意図せず空になってしまうことがあります。NULLを想定したバリデーションやキーの存在チェックを行い、NULLの場合には空のオブジェクトや空配列を設定するなど工夫が必要です。

複数の入れ子構造を持つJSONデータでも、階層ごとにCASE文やCOALESCEを組み合わせてNULLを一括補正することが可能です。こうしたアプローチを導入しておけば、柔軟なクエリ作成やデータ解析がしやすくなり、将来的なメンテナンスコストも抑えられます。

UPDATE文やトリガーによる自動NULL置換

データの更新時にNULLを自動的に補完する方法としてUPDATE文やトリガーの利用が挙げられます。常に整合性を保つ設定を検討しましょう。

運用中のデータベースでNULL値を意図せず格納してしまうリスクを避ける方法として、UPDATE文を利用して定期的にNULLを置き換える手段があります。
例えば

UPDATE table_name SET col = COALESCE(col, 0) WHERE col IS NULL;

のようにすると、既存のNULLを一括で別の値に変換可能です。

この方法の利点は、既に蓄積したデータを一度に統合的に処理できることです。ただし、テーブルが非常に大規模な場合などはパフォーマンスに影響が出る可能性があるため、実行前に検証が必要でしょう。

普段からデータ入力や更新の段階でNULLを回避したい場合は、UPDATE文のみならずトリガーを設定するのが効果的です。以下でトリガーを使った例を見てみましょう。

UPDATE文の基本パターンと条件付き置換

UPDATE文では、WHERE句の条件を指定することで柔軟にNULL置換を行えます。たとえば、売上額がNULLの場合のみ0に更新したいなら、

UPDATE sales SET amount = 0 WHERE amount IS NULL; 

のように記述すれば完結します。さらにCOALESCEを組み合わせれば、一度に複数の列を置き換えることも可能です。

CASE文をUPDATEのSET句に組み込めば、条件次第で異なる値を設定できます。
たとえば

CASE WHEN amount < 0 THEN 0 WHEN amount IS NULL THEN 0 ELSE amount END

とすることで、NULLも負数もまとめて0にできるなど、多彩なロジックを実装できます。想定外の値が入力されても一定のキーをもとに補正できるため、堅牢なデータ管理が期待できます。

このようにUPDATE文によるNULL置換は、ある程度データが蓄積したタイミングで一斉に補正する方法として重宝します。ただし、大量のレコードを対象にする場合は実行時間が長引くこともあるため、メンテナンスウィンドウを確保するなど慎重な運用が求められます。

トリガーを用いた自動補完とエラー回避

トリガーはINSERTやUPDATEが行われたタイミングで自動的に任意の処理を実行する仕組みです。NULLが入っていないか事前にチェックし、必要に応じてCOALESCEやCASE文を用いて値を上書きすることで、恒常的にデータ整合性を保つ運用ができます。

具体的には、

CREATE TRIGGER trigger_name BEFORE INSERT OR UPDATE ON table_name FOR EACH ROW EXECUTE PROCEDURE function_name();

といった形でトリガーを設定します。function_name()内でNEW.col = COALESCE(NEW.col, 0)などとしてNULLを補完しておけば、常にトランザクションの直前で補完されるため、アプリケーション側で特別な対策を行わなくても安全にデータを確保しやすくなります。

トリガーを使う場合は、システム全体のパフォーマンスにも影響を与える可能性があるため、設定や検証が重要です。それでも、NULLが発生したら即座に置き換えたいシナリオでは非常に効果的で、NOT NULL制約だけではカバーしきれない高度なロジックにも対応できるメリットがあります。

NULL置換時に発生しがちなエラーと対処法

NULL値の処理では、初心者が陥りやすいミスや制約エラーが存在します。ここでは代表的なエラー例とその回避策を紹介します。

NULLが絡むエラーの多くは、条件式でNULLを正しく判定していないことや、NOT NULL制約のある列に対して意図せずNULLを入力していることが原因です。適切な置換や事前のバリデーションによって、これらのエラーはかなり防ぎやすくなります。

COALESCEやCASE文を使いこなすと、そもそもNULLが残らないように制御できるため、実行時エラーのリスクを大きく下げることが可能です。エラー対処と同時に、なぜそれが起こったのかを検証し、データ定義やアプリケーションコードの構造を見直す習慣をつけることが大切です。

エラー1:= NULLで比較する誤り

SQLでは= NULLのような比較演算によるチェックは常に偽、または不明扱いになります。これはNULLが「値なし」であって、0や空文字とも違う特別な状態であることが理由です。この誤りは初心者が最初につまずくポイントといえるでしょう。

NULLかどうかを調べる際にはIS NULLやIS NOT NULLの構文を使うことを忘れないでください。またCOALESCE(カラム, '置き換え値') != '置き換え値'のような書き方を用いる手段もあります。ただし、必ずしもCOALESCEによる比較が正しいとは限らないので、生成される条件が期待通りの動きをするかテストが欠かせません。

万が一= NULLを使ってしまった場合は、思い通りの結果が返ってこなかったり、件数が0になるなどの不具合が生じます。バグの原因をすぐに特定できるよう、SQLでNULLを扱う際の基本ルールを改めて押さえましょう。

エラー2:NOT NULL制約カラムへのINSERT/UPDATE

NOT NULL制約がある列にNULLをINSERTまたはUPDATEすると、エラーが発生して処理が中断されます。特にバッチ処理やETLなどで大量データを投入している最中にエラーが起こると、以降のレコードが挿入されずに実行が止まることがあるため注意が必要です。

こうしたエラーを避けるためには、COALESCEで初期値を設定するか、トリガーでNULLを別の値に変換する方法が有効です。またアプリケーション側で事前にバリデーションを行い、NULLを絶対に生成しない設計をすることでも問題を回避できます。運用の工数やデータ量を考慮しながら、最も適した仕組みを選択しましょう。

NULLを厳格に排除する設計が必要な場面では、ユーザー入力段階でのチェックやWebフォームの必須項目設定など、上流工程で防ぐアプローチも検討できます。システム全体でのデータ品質を向上させ、安全かつ見通しの良いテーブル構造を保つことが大切です。

まとめ

NULL値の扱いは、データベース運用において避けて通れない重要なテーマです。COALESCEやCASE文を活用した適切なNULL補完は、計算ミスや表示不整合を防ぎ、安定したシステム運用を支える基盤となります。

PostgreSQLを用いた開発・運用の現場では、NULLが原因となるトラブルに直面することも少なくありません。簡易的な置換から高度な条件分岐、UPDATEやトリガーによる自動補完、さらにはNOT NULL制約を含めたテーブル設計まで、状況に応じた判断力と実装力が求められます。NULLの挙動やエラーの仕組みを理解しておくことは、品質の高いシステムを継続的に提供するための大きな武器になります。

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記事監修

ドライブライン編集部

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